原作は本屋大賞も受賞している町田そのこさんの同名小説で、杉咲花さん主演で2024年に公開された『52ヘルツのクジラたち』を鑑賞したので、軽度嘔吐恐怖症で2児の母のわたしがご紹介いたします。
あらすじ
傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家へと移り住んできた貴瑚は、虐待され、声を出せなくなった「ムシ」と呼ばれる少年と出会う。かつて自分も、家族に虐待され、搾取されてきた彼女は、少年を見過ごすことが出来ず、一緒に暮らし始める。やがて、夢も未来もなかった少年に、たった一つの“願い”が芽生える。その願いをかなえることを決心した貴瑚は、自身の声なきSOSを聴き取り救い出してくれた、今はもう会えない安吾とのかけがえのない日々に想いを馳せ、あの時、聴けなかった声を聴くために、もう一度 立ち上がる──。(公式サイトよりhttps://gaga.ne.jp/52hz-movie/about/)
嘔吐恐怖症の方は観られる??
主人公の杉咲花さん演じる貴瑚が母親から離れるシーンの帰りの車内にて口を押さえ出しそのまま走って車から降り、嘔吐するシーンがありました。その後もその場で志尊淳さん演じる安吾が貴瑚の背中をさすりながら宥め、語りかけるシーンなので、嘔吐恐怖症の方にはおすすめできません。
子どもと一緒に観られる??
⚠️映画の円盤に自死、自傷、DV、児童虐待、トランスジェンダー嫌悪などについてフラッシュバックに繋がる又はショックを受ける懸念のあるシーンが含まれるとのことで注意表記があります。
映倫では特に年齢制限を設けていませんが先ほど記載したようにかなり、胸にズシンとくるシーンが多くあるので繊細だったり、共感能力が高い方はお子さんではなくてもあまりオススメできません。もし、すごく興味があったということでしたら、心身共に元気なときの鑑賞をオススメします。
ネタバレあり感想
トランスジェンダーに虐待、ヤングケアラーなどなど、あまりに胸に重たいものを残すこの『52ヘルツのクジラたち』映画館で予告を観る機会があり、それからずっと気になっていたのですが、これは心身共に元気でないと厳しい、、、と思っているうちに時間が開いてしまい、今回オンラインレンタルにて鑑賞いたしました。
↑今回利用したのはこのゲオ宅配レンタル です!
原作は本屋大賞を受賞している大ヒット小説ですが、まだ私は未読のため、原作との解釈の違いやこのシーンははずなさいで欲しかった!などはわからないので、今回の映画のみを観た感想となります。
この映画ではまず東京から田舎町へ移住してきた杉咲花さん演じる貴瑚が自らを”ムシ”と名乗る声を発さない少年と出会い、彼が虐待されていることに気がついたことで過去の自分と重なり、かつて自分も救われたように、彼を救いたいと思うようになり、一緒に生活することで、過去の回想と現在を行き来するような構成で作られていました。
“魂のつがい”これは長年にわたりひどい虐待をうけ、ヤングケアラーでもあった貴瑚(杉咲花)を救いだした安吾(志尊淳)が愛を注ぎ注がれる存在のことを言った言葉で、この映画で度々登場します。
貴瑚は幼い頃から実母と養父から虐待を受け、就職先の専務の主税(宮沢氷魚)と付き合うも彼は立場上政略結婚を持ちかけられており、貴瑚には愛人として一緒にいることを求め、貴瑚を助けた安吾への嫉妬心から徐々にDVがひどくなり、貴瑚にとって主税は魂のつがいではなかった。
貴瑚のことを誰よりも愛し、支え、心配していた安吾は実はトランスジェンダーで、学生時代は地元で女性として生活していた。そのことを隠して自傷行為を繰り返しながらも一人耐え続ける中、貴瑚と出会い支えるも、男性として守る包み込んであげられることはできないと、貴瑚から魂のつがいになれないかと問いかけられたとき、幸せになってほしいとやんわり断る形で返してしまう。その後貴瑚が、主税からひどい扱いを受けていることを知った安吾はある手紙を送りそのことがきっかけで主税は職を失い、その仕返しに地元の母に男として生きていることを最悪の形でバラされてしまう。そしてその次の日の朝に主税に貴瑚と別れるか貴瑚1人を愛してほしいと頼む遺言書を残してこの世を去ってしまう。
主税は社長の息子のため専務となり、会社のトラブルで怪我をした貴瑚へ上司として謝罪したときに出会い政略結婚の予定があるにも関わらずそれを隠し、一緒にいるように。貴瑚には人生を救ってくれた恩人の美晴と”アンさん”がいることを知り、挨拶のためにした食事会で、”アンさん”が男だったと知りそれから徐々にDVがひどくなる。それを感じた安吾が政略結婚予定だった相手の家に貴瑚の存在を知らせる手紙を送ったことで、主税は結婚はなくなり仕事も解雇され、より自暴自棄になり、安吾の秘密を地元にいる安吾の親と貴瑚にバラしそのことがキッカケに安吾は自殺しそれから貴瑚にも命がけで逃げられ、魂のつがいはいなくなる。
安吾は貴瑚を想うばかりに魂のつがいにはなれないとこの世を去ってしまい、貴瑚はどんな形でも安吾と共に行きたかったと願う。それこそが、真の愛し愛される魂のつがいなのではないかと私は感じました。
そして、安吾を失い東京から無職の状態で過去に祖母が住んでいた田舎の一軒家に引っ越す貴瑚が出会った母親から”ムシ”と呼ばれる少年。貴瑚は尋ねてきた美晴と共に安吾にしてもらったように、少年を支え公的機関と連携し一緒にいられる術を探す。これこそが命のバトンで優しさのバトンなのではないかと思いました。
ラストの美晴が東京へ帰る前に町のみんなとバーベキューをした海に差した一筋のひかりは天使の梯子と呼ばれるもので、安吾が見ていることを指しているのだろうと思います。
誰にも声の届かない52ヘルツのクジラだった貴瑚の声に気がついたのは、安吾と美晴。そして、少年の声に気づいたのは貴瑚だった。今は52ヘルツのクジラでも、いつかは誰かに届くかも知れない。また、誰かの声に気づけるのは自分なのかもしれない。そう思わせてくれる映画でした。
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