
2021年に公開された映画『空白』。
万引き疑惑をかけられた少女の死をきっかけに、残された人々の「心の空白」を描いた、静かで激しいヒューマンミステリーです。
主演は古田新太さん。普段のユニークな姿とは一変、怒りと悲しみが渦巻く“父親”を圧巻の演技で表現しています。
この作品を観て感じた衝撃と余韻を、2児の母という視点から書き残したいと思います。
目次
🎬 基本情報
- 作品名:空白
- 公開年:2021年
- 監督:吉田恵輔(『ヒメアノ〜ル』『犬猿』など)
- 出演:古田新太、松坂桃李、田畑智子、趣里、藤原季節 ほか
- ジャンル:ヒューマンドラマ・サスペンス
- 上映時間:107分
🧠 あらすじ(ネタバレなし)
ある日、スーパーで万引きを疑われた女子中学生が逃走中に車にはねられ、死亡する。
娘を突然失った父・添田(古田新太)は、スーパーの若手店長・青柳(松坂桃李)に激しく詰め寄る。
だが、娘の死の真相が明らかになるにつれ、父、店長、そして周囲の人間たちの“本音”と“責任”が交錯していく――。
⚠️嘔吐恐怖症の方は観られる??
直接的な嘔吐シーンはありませんでした。
映画序盤で藤原季節さんが冗談で”吐きそう”と発しているシーンがあるので、言葉で聞くだけでも抵抗がある方にはオススメできません。
※古田新太さんが漁師役のため船上のシーンが度々あったり、飲酒シーン、自殺未遂シーンがあります。
👪 子どもと一緒に観られる?
この映画は、映倫ではPG12(小学生の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要。)となっており、中学生以下のお子さんには心理的な負担が大きいかもしれません。
中高生以上で、家族・学校・社会の問題について考えるきっかけにしたい場合にはおすすめできます。
ただし、万引き・事故死・感情の爆発など重いテーマが含まれるため、視聴後の対話がとても大切になる映画です。
🎯 こんな人におすすめ
- 社会問題を扱った重厚なヒューマンドラマが好きな人
- 感情のリアルなぶつかり合いを丁寧に描いた映画を観たい人
- 古田新太さん・松坂桃李さんの演技力を堪能したい人
- 家族・学校・地域といった“つながりの責任”について考えたい人
- 心に残る余韻のある作品が好きな人
👀 感想・レビュー(※ネタバレあり)
▶ 「正しさ」と「怒り」は紙一重
古田新太さん演じる父親は、とにかく見ていて怖い。でも理解できる。
「娘が万引きをしていたなんて認めたくない」「誰かが悪いと言いたい」――その怒りは、どこにもぶつけられない悲しみの裏返し。
だからこそ、彼の暴走は観ていてしんどいけれど目が離せない。
本当に苦しいのは「空白」を抱えたまま、何も癒されない人間の姿でした。
▶ 松坂桃李さんの繊細な演技が光る
一方で、加害者かもしれない側の若店長・青柳。
彼もまた、善意で止めようとした行動が裏目に出たことに苦しみ続けます。
「責任の取り方」「許されるとは何か」を、声を荒らげず、でも深く演じる松坂桃李さんの表情に引き込まれました。
▶︎寺島しのぶさんがリアルでイライラする
松坂桃李さん演じる青柳に好意を抱いたことにより妙に距離が近かったり、自分の正義を押し付けてくる系のおせっかいパート役の寺島しのぶさんが本当にリアルで、、、いるいる!!と言いたくなりながらも、イライラしてしまいました。
▶︎娘は万引きを本当にしたのか
事件の発端となった娘花音の化粧品の万引き。普段から大人しく化粧気もない娘が万引きをしたかもしれないということを最初は当然父親は認められなかったものの、徐々に学校での娘の様子、部屋に残されたぬいぐるみの中に忍ばせてあった数々のメイク道具を見つけたとき父親の心の中にもしかしたらという気持ちが沸いてきます。一緒に暮らしている娘とはいえ中学生の娘のこととなるとわからないことの方が多くなってしまうのかもしれないと、子どもをもつ親として少し怖くなりました。
▶ タイトル「空白」の意味がじわじわ刺さる
この映画に出てくる登場人物たちは、誰もが心に「空白(=喪失)」を抱えています。
娘を失った父親、責任を押しつけられる店員、沈黙する学校や社会、そして観ている私たち。
誰が悪いのかを決めきれないまま、「それでも時間は進んでいく」という現実が、心のどこかをヒリヒリと削ってくる作品でした。
📺どこで観られる??
▶︎Netflix

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✅ 総評
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(5.0/5.0)
誰もが“正しさ”を主張しながら、実は誰にも答えがない。
それでも生きていくために「空白」に向き合わなくてはいけない――。
この映画は、静かだけど確実に心に刺さります。
「誰もが被害者で、誰もが加害者」そんな複雑さに、あなたはどう向き合いますか?
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