
2021年に公開された映画『ファーストラヴ』。
島本理生さんの直木賞受賞小説を実写化し、主演・北川景子さんが心の闇に向き合う公認心理師を演じた、衝撃と静かな余韻を残す心理サスペンスです。
2児を育てる母で軽度嘔吐恐怖症である私自身が、この映画に感じたことを、女性の視点・親の視点・人間ドラマとしての視点からまとめてみました。
目次
🎬 映画基本情報
- 作品名:ファーストラヴ
- 公開年:2021年
- 監督:堤幸彦
- 原作:島本理生(第159回直木賞受賞作)
- 出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、窪塚洋介、木村佳乃 ほか
- ジャンル:心理サスペンス・ヒューマンドラマ
- 上映時間:119分
🧠 あらすじ(ネタバレなし)
大学で講義中の父親を殺害した女子大生・環菜(芳根京子)。
「動機は、そちらで見つけてください」と冷たく語る彼女に、世間の注目は集中する。
事件の真相を追うのは、公認心理師の真壁由紀(北川景子)。取材を通じて、彼女は環菜の過去、自らの家庭、そして“愛とは何か”に向き合うことになる――。
⚠️嘔吐恐怖症の方は観られる??
⚠️こちらの映画は嘔吐恐怖症の方にはオススメできません
北川景子さん演じる由紀の成人式の日に母親からある秘密を聞かされたときに、耐えきれず乗っていた車から飛び出して嘔吐するシーンがありました。
👪 子どもと一緒に観られる?
テーマ的に、正直子どもと一緒に観るのはおすすめできません。
性被害・家庭内の問題・心理的暴力といった要素が含まれるため、中学生以上であっても視聴の前に大人が内容を把握しておくのが安心です。
✅こんな方にオススメ!
- 心理サスペンスや人間ドラマが好きな人
- 原作小説『ファーストラヴ』を読んだことがある人
- 北川景子さん・芳根京子さんの演技力に注目している人
- 家族の「見えにくい傷」に関心のある人
- 感情の機微を丁寧に描いた作品を探している人
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👀 感想・レビュー(ネタバレあり)
なぜ環菜は父を殺したのか?
環菜の動機は、「父に性的虐待を受けていた」というショッキングなもの。それでも彼女は、はっきりとそれを語ることはない。むしろ、事件を通して描かれるのは「語れなかった傷」「見なかったことにされた記憶」です。
母親の冷たさや社会の無関心、そして“ファーストラヴ(初恋)”が本当は何だったのか――それをひとつひとつ拾っていく物語が、静かに、でも鋭く胸に刺さります。
女優陣の演技がすごい
まず北川景子さんですが、正直、それまでのイメージとはまったく違う「影を抱えた女性像」に驚きました。
主人公の由紀自身もまた家庭環境に問題を抱え、結婚してなお過去に引きずられている。そこに環菜との対話が交差することで、心の奥底があぶり出されていく演出が見事でした。
そして芳根京子さんは、同じ女性として想像したら苦しくなるような耐え難い環境で育ち、両親に助けを求めるも救われることがなく、助けを求めた男性からも性を搾取されてしまい、自傷行為をすることが状況の打開策となってしまった結果心が壊れてしまったような女性を演じられており、その冷静なようなどこも見ていないような表情や心理士の由紀が過去のトラウマに触れてしまったときのパニック状態が圧巻でした。
環菜の母親役の木村佳乃さんは、始めの頃とラストでは印象がかなり変わった女性でした。始めは煌びやかに着飾って娘に寄り添うことをしない母親というイメージでしたが、実は彼女も夫に怯え自傷行為をしていて自分を守ることで精一杯の弱い女性だったと感じました。
そして出番自体はかなり少ないながらも私の印象に強く残ったのは、高岡早紀さん演じる由紀の母親です。彼女は娘を成人式へ送る車内で、あなたが小さい頃に父親が海外で児童買春をしていたということを聞かせます。あなたも大人になったらんだから男性とお付き合いすることもあるだろうから男性というものはこういったものだと知っておく必要があるから伝えたのとさも親心のような親切のようなフリをして。その目には、児童買春をしていた夫への恨み、何も知らずに綺麗に成長した娘への嫉妬が混ざっていたように感じてゾッとしました。
迦葉の生い立ち
この映画では父親の性に翻弄された女性たちがトラウマを抱えながらなんとか生きている様子を描かれてる場面が多いのですが、中村倫也さん演じる迦葉の生い立ちも切ないものでした。小学生の頃父親は亡くなり母親は男と出て行き餓死しかけていたところを叔母家族に引き取られることになり従兄弟であった窪塚洋介さん演じる我聞と義理の兄弟になり最終的に我聞は好意を抱いていた由紀と結婚してしまうというなんとも報われない人物で切なかったです。
我聞と迦葉の義理兄弟の関係性がいい
迦葉は小学生の頃に母親の姉妹の真壁家に引き取られ、始めの頃は全く笑わない子どもでしたが、我聞は笑わせようと積極的に関わりをもっていました。その結果迦葉は育ててくれた叔父と叔母には感謝しつつも遠慮があるといいつつ、我聞には心を開いており、何度一緒にやってもボードゲームで迦葉が勝っていたときに我聞から「迦葉は頭がいいから医者か弁護士になるといいよ」と言われたことをキッカケに実際に弁護士になっているという点でも、不器用ながらも我聞を本物の兄のようにしたっている関係性がよかったです。
由紀×迦葉、由紀×我聞の関係
お互い家庭環境やトラウマを開示し合ってハッキリと自分の意見を言い過ぎに感じるほど言い合う由紀と迦葉、その一方で穏やかで優しい我聞には甘えられるもトラウマのことは言えない由紀とそれも理解した上で無理に聞き出そうとはしない我聞。その2組の対照的ともいえる関係性の違いが観ていてどうのか、、、と切ないながらも面白かったです。
✍️ 総評
⭐️⭐️⭐️⭐️☆(4.5/5.0)
心理サスペンスとしてだけでなく、現代社会が見落としがちな「家庭の中の苦しさ」や「語られない被害」に目を向ける作品でした。
観終わったあと、しばらく言葉が出ない。そんな映画です。
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