『ちょっと思い出しただけ』を観た感想|別れの記憶を遡る切なすぎる恋愛映画【2022年公開】

た行
わたし
ゆる

今回は、2022年公開の日本映画『ちょっと思い出しただけ』をご紹介します。

六年間の恋愛を“逆再生”で描いた、切なくて、どこかあたたかいラブストーリー。

軽度の嘔吐恐怖症持ちで、現在2児を育てている私が、リアルな視点でレビューしていきます。

 

 

 

 

 

 

 

基本情報

 

  • 作品名:ちょっと思い出しただけ
  • 公開年:2022年
  • 監督:松居大悟
  • 出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実ほか
  • 上映時間:115分
  • ジャンル:ドラマ・ロマンス

 

 

 

あらすじ

 

2021年7月26日、この日34回目の誕生日を迎えた佐伯照生(池松壮亮)は、朝起きていつものようにサボテンに水をあげ、ラジオから流れる音楽に合わせて体を動かす。ステージ照明の仕事をしている彼は、誕生日の今日もダンサーに照明を当てている。一方、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)は、ミュージシャンの男を乗せてコロナ禍の東京の夜の街を走っていた。目的地へ向かう途中でトイレに行きたいという男を降ろし、自身もタクシーを降りると、どこからか聴こえてくる足音に吸い込まれるように歩いて行く葉。すると彼女の視線の先にはステージで踊る照生の姿があった。

時は遡り、2020年7月26日。照生は部屋でリモート会議をし、葉は飛沫シートを付けたタクシーをマスク姿で運転している。照生は誕生日の夜に誰もいない部屋で静かに眠りにつく。また一年遡り、誕生日を迎えた照生は、昼間は散髪屋で伸びた髪を切り、夜はライブハウスでの仕事を終えたあとに行きつけのバーで常連のフミオ(成田凌)とダンス仲間の泉美(河合優実)と飲んでいた。同じ頃、居酒屋で合コンをしていた葉は、煙草を吸いに店の外に出たところで見知らぬ男から声をかけられ、話の流れでLINEを交換することに。葉のアイコンを見た男が「あれ、猫飼ってるんですか?」と尋ねると、葉は「いや…今は飼ってないけど」と返し、続けて「向こうが引き取ったから」と切ない表情でポツリと呟く。彼女がLINEのアイコンにしていた猫は、いまも照生が飼っているモンジャだった…。

時は更に1年、また1年と遡り、照生と葉の恋の始まりや、出会いの瞬間が丁寧に描かれていく。不器用な2人の二度と戻らない愛しい日々を“ちょっと思い出しただけ”。(公式サイトよりhttps://choiomo.com/about_sp.php#story_box)

 

 

 

 

嘔吐恐怖症の方でも観られる?

 

私自身が軽度の嘔吐恐怖症なので、常に気になるポイントですが――

本作には直接的な嘔吐シーンはありません。ただし、酔っ払ったサラリーマンがタクシーに乗ってくる場面があり、「吐きそうなら言ってくださいね」というやり取りがあるため、少しヒヤッとするかもしれません。

それ以外は比較的安心して観られる内容です。

 

 

 

 

子どもと一緒に楽しめる?? 

 

グロテスクな描写や暴力シーンは一切ありません。ですが、内容は大人の恋愛と人生の選択を描いた静かなドラマであり、時系列が逆になっている構成もやや複雑です。

そのため、お子さんと一緒に楽しむよりも、大人がゆっくりと静かに向き合う時間にぴったりの映画だと感じました。

 

 

 

 

こんな方にオススメ

 

✳︎夜、ふっと誰かを思い出してしまう人

✳︎一度は本気で恋したことがある人

✳︎夢中になった人がいたことがある人

✳︎静かで余韻のある映画が好きな人

✳︎池松壮亮さん、伊藤沙莉さんのファンの人

 

 

 

 

ネタバレあり感想

 

物語は2021年、コロナ禍の東京から始まります。

タクシー運転手の葉が、トイレに行った乗客を待つ間に劇場のステージを覗き、そこには照生の姿。そこから、彼女の記憶がゆっくりと巻き戻されていく――という構成です。

毎年の照生の誕生日だけが切り取られ、1年ずつ遡っていく手法がユニークで、最初は少し混乱しました。時間の経過がわかるよう、照生の部屋に貼られたカレンダーがヒントになっているのですが、正直、それに気づくまでは「どういう時間軸で話が進んでいるの?」と戸惑う場面も。

それでも気づけば、毎年の誕生日が描き出す感情のグラデーションに、どんどん引き込まれていきます。

ときめき、幸せ、すれ違い、孤独――。どれもがリアルで、どこか自分にも重なるような気持ちになります。

とくに印象に残ったのは、葉が別れたあとに新しい人生を歩み始め、母親になっている描写。

それでも、照生の踊る姿を見た瞬間、ほんの“ちょっと”思い出す。照生もまた、葉の運転するタクシーを見て、“ちょっと”思い出す。

お互いに気づいていても、声もかけない、追いかけもしない――その距離感が、とてもリアルで、切なく、美しかったです。

この映画は、初見で物語の仕組みに気づけなかった部分もありましたが、だからこそもう一度観たいと思わせてくれる作品でした。

 

 

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