東日本大震災から10年後の仙台を舞台にした『護られなかった者たちへ』をNetflixにて鑑賞したので、軽度嘔吐恐怖症で、2児の母の私目線でご紹介いたします。
あらすじ
東日本大震災から10年後、宮城県内の都市部で全身を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件が発生した。被害者はいずれも善人、人格者と言われていた男たちだった。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎は、2つの事件からある共通項を見つけ出す。そんな中、利根泰久が容疑者として捜査線上に浮かび上がる。利根は知人を助けるために放火、傷害事件を起こしたて服役し、刑期を終えて出所したばかりの元模範囚だった。犯人としての決定的な確証がつかめない中、第3の事件が起こってしまう。(映画.comよりhttps://eiga.com/movie/92887/)
嘔吐恐怖症の方は観られる??
映画の序盤で死後1週間経った遺体を見た林遣都さん演じる刑事が嘔吐しているシーンがありました。
その後は特に嘔吐シーン、体調不良シーン、飲酒シーンはありませんが、嘔吐恐怖症の方にはおすすめできません。
子どもと一緒に楽しめる??
今当時の東日本大震災を知らない子ども達が増えており、当時の悲惨さ、避難所での様子を知るには観ておいてほしい映画ではありますが、生活保護問題や餓死させるという殺人方法が中々しんどいものがあり、中高生でやっと受け止められるかな?というように感じます。
こんな方にオススメ!!
✳︎国の制度にモヤモヤしたことがある方
✳︎血がつながらなくても家族ということがあると思える方
✳︎苦しいときを乗り越えたい方
✳︎震災のフラッシュバックがない方
ネタバレあり感想
この映画は2021年に公開され、日本アカデミー賞で12部門の優秀賞を獲り、清原果耶さんは最優秀助演女優賞も受賞されたかなり、衝撃的で話題性もあった映画なのですが、私自身は当時北海道の学生だったとはいえ、連日あまりに衝撃的な映像が続くニュースに、被災者の方々の悲痛な訴えなどがまだ記憶に鮮明に残されており、そこから10年後の仙台が舞台とはいえ観ることに少し勇気が必要な映画でした。
映画では震災当時の遺体安置所や避難所となってしまった学校、そこで出会った倍賞美津子さん演じる未亡人のけいさん、佐藤健さん演じる水産加工場勤務で津波で全てを無くしてしまった利根、清原果耶さん演じる津波で家族を亡くした小学生のカンチャンこと幹子の3人の血は繋がっていないものの寄り添い合った家族のような様子と突然起こった連続餓死殺害事件を追う阿部寛さん演じる刑事の笘篠と林遣都さん演じる蓮田のコンビが交互に描かれております。
避難所のシーンは薄暗く殺伐とした時間も多いのですが、家族を失った3人にとって家族で楽しそうに微笑み合う様子をみることの方が辛そうで印象的でした。
周りや家族からは善人と評価の高い永山瑛太さん演じる生活保護課の役所職員の三雲がしばられ餓死している状態で見つかり、次第に10年前の震災との繋がりが見えきて、けいさんが生活保護を受給することなく餓死してしまったことからまんまと利根が犯人だろうと思っていたのですが、まさかの幹子で、そのどんでん返しに驚愕でしたし、一生懸命で歪んでしまった正義感に切なくなりました。
被害者の三雲、城之内は結果のとしてけいさんの死亡の一端となり、幹子と利根から恨みをかうことになってしまいましたが、当時たくさんの人が職や家を失い生活保護課は想像を絶する忙しさで、更に上から予算の圧力があったと考えると、非情と感じる対応ではありましたが、自分もギリギリな状況の中で寄り添った心ある対応ができる人はどのくらいいるだろうと考えてしまいました。
そして何より印象に残ったのは、利根と笘篠のラストシーンで、未だ見つかっていない笘篠の子どもの最期を利根が発見し、利根自身のトラウマもあり助け出すことが出来なかった、そのことから同じような服を着た子どもの幹子を何がなんでも守ろうと殺人の罪まで被る覚悟でいたことを告白したシーンでした。そのときの阿部寛さんの表情がなんとも言えない苦しいような、表現しようもないような感じで『見ていてくれてありがとう』ということを言い、自分だったら言えるだろうか、とどうしようもないことだとわかっていても責めてしまったりするかもしれないと考えてしまいました。
生活保護とは誰のものだろう、どこで線引きすることが正しいのだろうかと考えずにはいられない映画でした。
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