
AIが再現した母と生きる青年。
それは“優しさ”か、それとも“執着”か。
池松壮亮主演『本心』
デジタル時代の「命」と「心」を問う、衝撃のヒューマンドラマをTELASAにて鑑賞したのでご紹介いたします。
目次
✅基本情報

- 作品名:本心(ほんしん)
 - 公開日:2024年11月8日(日本)
 - 監督・脚本:石井裕也
 - 原作:平野啓一郎「本心」
 - 主演:池松壮亮(石川朔也役)
 - ジャンル:ヒューマンミステリー/SF要素あり
 
📖あらすじ(ネタバレなし)
工場勤務の青年・石川朔也(池松壮亮)は、母・秋子(田中裕子)から「大事な話がある」という電話を受け、急行するが、豪雨の中で母を救おうとした際に昏睡状態に陥る。1年後、朔也は目覚めた後、母が“自由死”を選んでいたことを知る。
働いていた工場もロボット化の影響で閉鎖され、朔也は「リアル・アバター」という職を得るが、自分の存在や母の本心を知るため、仮想空間で母を再現する「VF(ヴァーチャル・フィギュア)」技術に手を伸ばしていく。
🎬見どころポイント
池松壮亮の新たな役柄
不安定で揺れ動く青年・朔也を演じる池松壮亮。従来のクールな印象とは異なり、デジタル時代に翻弄される“迷子な男”を丁寧に表現しています。本人も「限りなく現実味を帯びてきた時代に近いSF」と語っています。
デジタルとリアルの境界を問う物語
仮想空間やAI技術「VF」など、SF的設定を用いながら、その根底には“人間の本質”や“母親の本心”という普遍的テーマが据えられています。
映像・演出の洗練
石井裕也監督らしい静かな演出、映像美、そして“日常と非日常”が交錯する世界観が印象的。映像を通して“存在の揺らぎ”が伝わってきます。
📚原作との違い
- 原作小説「本心」はより哲学的・抽象的な描写が多く、映像化にあたって「テクノロジー」「近未来」「仮想空間」といった視覚的要素が強化されています。
 - 映画では母のVFや仮想空間の演出が映像的に可視化され、原作では内面描写として語られていた部分がビジュアル化されています。
 - 登場人物の心理・背景が整理されており、映画としての観やすさ・構成の明快さが意識されています。
 
🧑🧒子どもと一緒に観られる?
暴力・性的描写は少ないものの、テーマが“死”“仮想”“存在”といった重めの内容を含んでいます。高校生以上、または大人の観賞に適した作品です。家族で観るなら、“テクノロジーの進化”や“人の尊厳”について話し合うきっかけとなる映画です。
⚠️嘔吐恐怖症の方でも観られる??
直接的な嘔吐シーンはありませんが、冒頭は昏睡状態からの目覚めですし、度々飲酒シーンもあり、中には泥酔している人も出てきます。
個人的には、あまり嘔吐恐怖症の方にオススメできる映画とはいえないかと思います。
🌟こんな人におすすめ
- 池松壮亮の演技の幅を見たい人
 - 石井裕也監督の作品が好きな人
 - SF要素を含みつつ人間ドラマを味わいたい人
 - テクノロジーと人間の関係に興味がある人
 - 原作「本心」が好きで実写化版を観たい人
 
📺どこで観られる??(2025/11現在)
TELASA

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原作派の方は
💬ネタバレあり感想
(※以下、物語の核心に触れています)
朔也が母・秋子の死の理由を探り、仮想空間で母を再現するという奇抜なプロット。しかし、物語が進むにつれてそれは“母を知る旅”というよりも“自身を見つめ直す旅”となっていきます。
VFとして再生された母は、最初はぬくもりある“理想の母”として朔也と共に時間を過ごしますが、やがて“知らなかった母の側面”を見せ始めます。母が本当に望んでいたもの、母の中に潜んでいた孤独や痛みが浮かび上がると同時に、朔也自身の存在理由も揺らぎます。
特に印象的だったのは、朔也が「母の本心は何だったのか」という問いに向き合う場面。「母が選んだ自由死」「働く場所を失っていく自分」「仮想で蘇る母」——これらのテーマが重なり合い、観る側にも「自分の本心とは何か」「自分は何のために生きているのか」を問いかけます。
池松壮亮の表情が刻一刻と変化し、彼の内側にある葛藤が画面を通じて伝わってくる。母と息子の関係、テクノロジーと人間の関係、現実と虚構の関係――どれも境界が曖昧で、その曖昧さこそがこの作品の魅力です。
ラストでは、朔也が母のVFと共に過ごした日々を振り返りながらも、現実世界に一歩足を踏み出すように歩き出します。仮想の母ではなく、もう一度“自分自身”と向き合う姿が、深い余韻を残します。
🕊️まとめ
映画『本心』は、決して華やかなSFではありません。むしろ、ぼんやりと光るスクリーンの中で“人の本心”をそっと観せてくれる作品です。
池松壮亮が演じる朔也の揺れ動き、石井裕也監督の抑えた演出、そして近未来的設定の中で生まれる“存在の問い”。
観終わったあと、自分の胸の中に小さな“問い”が残る。それこそが、この映画が私たちに与えてくれる贈り物です。

  
  
  
  

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