
「普通に生きているつもりだった」
けれど、気づいたときにはもう後戻りできない——。
黒沢清監督の最新作 『Cloud クラウド』 は、
SNSやネット取引が当たり前になった現代社会の“空気”そのものを恐怖として描き出すサスペンススリラーです。
菅田将暉演じる青年が、
静かに、しかし確実に日常を侵食されていく過程は、
決してフィクションとして片づけられないリアルさを帯びています。
目次
✅基本情報

- 作品名:Cloud クラウド
- 公開年:2024年
- 監督・脚本:黒沢清
- 上映時間:124分
- ジャンル:サスペンス/スリラー
キャスト
- 菅田将暉(吉井良介)
- 古川琴音(秋子)
- 奥平大兼(佐野)
- 岡山天音
- 荒川良々
- 窪田正孝
- 松重豊
📖あらすじ(ネタバレなし)
町工場で働く一方、
ハンドルネーム「ラーテル」として転売業で稼いでいた吉井良介。
会社からの昇進話を断り、
仕事を辞めて恋人・秋子と新生活を始めた彼は、
転売業を本業にし、若者・佐野を雇って事業を拡大していく。
しかしその頃から、
彼の周囲では説明のつかない不穏な出来事が起こり始める——。
💬ネタバレなし感想|“何もしていないのに壊れていく”恐怖
『Cloud』の怖さは、
幽霊や殺人といった分かりやすい恐怖ではありません。
- 正体のわからない悪意
- 誰が敵かわからない不安
- 自分が何を恨まれているのかすら不明
そのすべてが、
ネット社会の匿名性と強く結びついています。
「悪いことはしていない」
「違法ではない」
それでも“誰かの怒り”は確実に積み重なっていく。
菅田将暉の演技が際立つ理由
菅田将暉演じる良介は、
極端に悪人でも、被害者意識の強い人物でもありません。
- 要領よく立ち回る
- 他人に深入りしない
- 効率を優先する
現代にいくらでもいそうな“普通の若者”。
だからこそ、
彼が少しずつ追い詰められていく様子が異様なリアリティを持ちます。
古川琴音が演じる「不安の象徴」
恋人・秋子は、
この映画において“安心”と同時に“違和感”を象徴する存在です。
彼女は常に寄り添っているようで、
どこか核心に触れない。
古川琴音の静かな演技が、
観客の不安をさらに増幅させます。
黒沢清らしい恐怖演出
- 静かな長回し
- 不自然な間
- 説明されない出来事
『Cloud』は、
「わからなさ」を恐怖として突きつけてくる映画です。
理由が語られないからこそ、
観る側は自分自身の想像で恐怖を補完してしまう。
タイトル「Cloud」が示すもの
クラウド=雲
同時に、データや匿名性を象徴する存在。
- 実体がない
- 誰のものかわからない
- しかし確実に影響を与える
この映画で描かれる狂気は、
まさに“クラウド的”な恐怖です。
🧑🧒子どもと一緒に観られる?
- 小学生:×
- 中高生:△(内容理解が難しい)
- 大人向け:◎
暴力描写よりも精神的圧迫感が強く、
完全に大人向け作品です。
🌟どんな人におすすめ?
- 黒沢清作品が好き
- SNS社会の怖さに関心がある
- 考察系映画が好き
- 後味の悪さも含めて映画を楽しめる
⚠️嘔吐恐怖症の方でも観られる??
直接的な嘔吐シーンはなく、体調不良や泥酔シーンもありませんが、岡山天音さん演じる三宅がトイレで暴行を受け血を吐き出すシーンはあるので、拒否反応を示す方もいらっしゃるかもしれません。
📺配信情報
Netflix

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🎬ネタバレあり徹底考察
■「敵」は誰だったのか?──実体のない加害者たち
『Cloud』で最も不気味なのは、
明確な“悪役”が最後まで存在しない点です。
良介(菅田将暉)は、
- 転売で稼いでいる
- 会社を辞めた
- 郊外で静かに暮らしている
ただそれだけ。
にもかかわらず、
彼の周囲にはじわじわと“敵意”が集積していきます。
敵の正体は「一人の人間」ではない
この映画における敵は、
- 転売で損をした誰か
- ネットで恨みを募らせた誰か
- 正義感を暴走させた誰か
- 職場で蔑ろにされたと感じた者
そうした無数の匿名の感情です。
黒沢清が描いているのは、
「誰かが意図的に仕組んだ復讐」ではなく、
社会そのものが生む集団狂気。
■ 転売=悪なのか?という問い
映画を観ていると、
「良介は悪いことをしているのか?」という疑問が何度も浮かびます。
- 違法性はグレー
- 努力はして稼いでいる
しかし同時に、
- 誰かの欲しいものを奪っている
- 不満を生み出している
- “見えない被害者”を作っている
という側面も否定できません。
黒沢清は善悪を断定しない
本作が恐ろしいのは、
転売を明確に断罪もしないこと。
だからこそ観客は、
- 良介に共感しながら
- どこかで「報いが来るのでは」と感じてしまう
この曖昧さ自体が、
現代社会の倫理の不安定さを象徴しています。
■ 佐野(奥平大兼)の存在が示す“次の世代”
佐野は、良介の後継者のようであり、
どこか得体の知れない危うい存在です。
- 転売を「ゲーム」のように捉える
- 他人の感情に無頓着
- 成功だけを追い求める
彼は良介以上に、
ネット社会に適応した若者とも言えます。
良介が壊れ、佐野が生き残る意味
これは単なる世代交代ではなく、
「狂気は終わらない」
という残酷なメッセージ。
個人が潰れても、
構造は何も変わらない。
■ 秋子(古川琴音)は味方だったのか?
秋子は一見、
最後まで良介の味方に見えます。
しかし彼女は、
- 何が起きているのかを深く追及しない
- 良介の行動を止めない
- 危機を察知しても曖昧にやり過ごす
この態度は、
無関心という名の加担とも取れます。
「何もしない」ことの怖さ
黒沢清作品ではよくあるテーマですが、
- 積極的な悪
- 消極的な善
どちらも結果的には同じ方向へ向かう。
■ ラストの解釈|なぜ救いがないのか
物語終盤、
良介の日常は完全に崩壊します。
しかし映画は、
- 明確な決着
- 教訓的な結末
を一切提示しません。
これは「終わった話」ではない
ラストが示すのは、
- この狂気は今も続いている
- 観ている私たちも当事者
という現実。
クラウドの中に漂う無数の感情は、
今日もどこかで誰かを追い詰めている。
🕊️まとめ
映画 『Cloud クラウド』 は、
「何をしたか」ではなく
「どう見られたか」で人生が壊れる時代を描いた作品です。
静かで、説明が少なく、答えも与えない。
それでも観終わったあと、
心に重く残り続ける恐怖が確かにあります。
現代を生きる私たちにとって、
決して他人事ではない一本です。



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