
夫が突然いなくなったら、あなたは“日常”を続けられるだろうか。
映画『アンダーカレント』は、失踪した夫を探しながら銭湯を切り盛りする女性が、見ないようにしていた気持ちと向き合っていく静かな人間ドラマだ。大きな事件も派手な演出もない。しかし、登場人物たちの心の奥底で揺れ続ける“目に見えない流れ”が、観る者の胸を深く揺さぶる。真木よう子・井浦新・永山瑛太の存在感が溶け合い、静かで濃厚な余韻が残る作品となっている。
目次
✅基本情報

- タイトル: アンダーカレント
- 原作: 豊田徹也『アンダーカレント』(講談社 モーニングKC)
- 監督: 今泉力哉
- 出演: 真木よう子、井浦新、永山瑛太、リリー・フランキー、江口のりこ、中村久美
- ジャンル: ヒューマンドラマ
💬あらすじ
家業の銭湯を継いだ かなえ(真木よう子) は、夫 悟(永山瑛太) と平穏な日々を送っていた。しかし、悟が突如姿を消す。途方に暮れるかなえだったが、休業していた銭湯を再開。そこへ、銭湯組合を通じて 堀(井浦新) という男が訪ねてきて、住み込みで働くことになる。探偵・山崎(リリー・フランキー)と悟の行方を追いながら、堀と静かに流れる日々を送るうちに、彼女の心の底流は少しずつ変化していく。しかし、ある出来事をきっかけに、三人が抱えていた“見ないふりをしてきた本音”が浮き彫りとなっていく。
📖テーマ解説:「アンダーカレント=心の底流」
タイトルにある アンダーカレント(=目に見えない潜流) は、まさに登場人物たちが抱える“本音”や“本質”を表しています。
表面上は平和でも、
丁寧に生活を続けていても、
人の心には流れ続けるものがある。
- 悟の失踪
- 堀の秘密
- かなえの「本当はどうしたかったのか」
この3つの“潜流”が、物語の終盤に向かって一気に浮かび上がります。
大きく泣かせるわけではありません。
でも観終わると、胸の奥がひたひたと波打つような余韻が残ります。
🌟どんな人におすすめ?
✔ 心理描写の深いドラマが好きな人
✔ 派手さより“静かな感情”を味わう映画が観たい人
✔ 今泉力哉監督作品が刺さる人
✔ 人の心の複雑さ・曖昧さに共感する人
✔ 豊田徹也の原作が好きな人
🧑🧒子どもと一緒に観られる?
小学生以下には不向き。
理由:
- テーマが完全に大人向け
- 心理的な重さを伴う
- 婚姻・別離など複雑な感情を扱う
中学生なら理解可能ですが、
子ども向けの娯楽映画ではありません。
⚠️嘔吐恐怖症の方でも観られる??
直接的な嘔吐シーンはなく、過去のトラウマからの体調不良シーンや印象に残らない程度の飲酒シーンがあります。
比較的嘔吐恐怖症の方でも問題なく観られる映画かと思います。
📺配信情報(2025/11現在)
TELASA

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原作
🎬感想/レビュー
★静かだけど、ものすごく感情が揺さぶられる映画
『アンダーカレント』は声高にドラマを叫ぶ作品ではありません。
セリフを削ぎ落し、感情を深掘りしすぎず、ただ“流れ続ける生活”の中で、人の心に潜む奥深いものが少しずつ形を現します。
今泉力哉監督らしい、
「日常の中に潜む、説明しすぎない余白」
が完璧にハマった作品でした。
★真木よう子の静かな強さ
夫の失踪という大事件にもかかわらず、泣き崩れず、ただ淡々と生きようとする。
でも、その奥にある“動揺”や“孤独”が表情の揺れだけで伝わる。
真木よう子の演技が圧巻です。
★井浦新の存在が「静かな波」を立てる
穏やかで、気配が薄くて、どこか影がある。
堀という男が現れるだけで、かなえの日常の色が変わっていく。
二人の間にあるのは恋愛のようで恋愛じゃない。
埋めないままにしていた心の穴が、勝手にかたちを変えるような関係性。
静かで、優しく、でもときどき不穏。
井浦新の得体の知れない透明感は、この作品の大きな武器。
★永山瑛太の“何を考えているのかわからなさ”が最高
悟が何者なのか、
なぜいきなり消えたのか、
観客は少しずつ彼の像を組み立てていくことになります。
瑛太の“危うい普通さ”が、作品のリアリティを底上げ。
🕊️まとめ
『アンダーカレント』は、人が抱え込んできた“本音”が静かに浮かび上がる映画だ。
派手な展開こそないものの、日常の隙間に潜む感情が一滴ずつ積み重なり、気づけば胸が満たされるような不思議な余韻を残す。登場人物の誰もが完璧ではなく、弱さや曖昧さを抱えながら生きている——だからこそ、観る側は彼らの痛みや迷いに寄り添いたくなる。豊田徹也原作の繊細な世界観と今泉力哉監督の静かな演出が美しく調和した、心に長く残る一本だ。



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